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オーパス蔵の音

オーパス蔵の音

 SPをノスタルジアで味わうのでなく、20世紀の名演奏の芸術および技術の実際を21世紀に伝えると同時に、演奏そのものを現在の演奏と並べて味わうことができるようにしたい。 ここにオーパス蔵の基本方針がある。  従来の蓄音器の音を目指した復刻は演奏者がレコード溝に刻み込んだ音を取り出しきれていない。実際には当時の技術は従来の復刻盤に聞かれる音よりもっと多くの音楽があったのである。 他方最近のノイズを著しくカットした復刻は以前のフィルター方式に比べ原音の劣化は少ないが、それでも音が変化している例が散見される。英Classic Record Collector誌(SP,LP時代を対象にしたレコード雑誌:現在はClassical Recordings Quarterly)でもノイズ低減に際して音楽も低減し、お化けの演奏のようになっていると危惧されている。 (Noise Reduction, Music Reduction: Tully Potter,CRC編集長)そこで音楽・音質を最優先に考え、スクラッチノイズを敢えて残している。せめて ‘盛大なノイズの中に・・・’と言われることのないレベルにした つもりである。演奏の質さえ高ければ1分もすれば耳は慣れるという昔からの言を信じている。

<復刻の名人安原 暉善>

半世紀以上のレコードコレクションは筋金入りで、40000枚ほどのSP・LPは岡山県牛窓町のレコード蔵で開放され実際に味わうことができる。 この蔵がオーパス蔵という名前の出所である。 安原は以前造り酒屋を経営していたので,酒蔵を連想される向きもある。またこの蔵の文字には、クラシックのクラも掛けている。

安原は従来のSP復刻LPの音に満足できず、SPを蓄音器で聞くだけでなく、もっと手軽に味わえるようにとSP復刻を手がけだして30年以上になる。 他の復刻の音が溝に刻まれた情報を十分に取り出していないと不満を感じ、溝と針先の接触を基本から考えることや様々な工夫を加え従来にない温かみがあり、かつ生々しい迫力ある音を取り出すことに成功した。
これまでにも倉敷の大原コレクションの約1800枚のSP復刻やNHKの復刻など、依頼による多くのテープ化を行っている。 いまは亡き大ピアニストウィルヘルム・ケンプにも彼の若い頃のSPを復刻し差し上げており、その音の瑞々しさを驚嘆する礼状を頂いている。
身近の少数で味わっているだけで埋もれてしまうのは惜しいと思い、その音をCD化して世に出そうとできたのがオーパス蔵である。 SPの音、そして演奏が意外によい、こんなによいのかなど共感する人がひとりでも多く増えることを願うところである。

復刻ばかりでなく、レコード蔵における月1回の例会、岡山オリエント美術館を始めとするSP鑑賞会などSPをわってもらうための活動を盛んに行なってきた。

安原暉善氏はこの5月末に逝去されました。冥福をお祈りするとともに、これまでの復刻を感謝します。
                                                                                                        (2015.6)

 


Opus KURA Hino, Tokyo, JAPAN